外壁塗装工事は、増築工事や改装工事などと比べると、請け負うには簡単な仕事です。
なぜならほとんどの場合、足場屋さんと塗装屋さんの2業者で完了するからです。
するとこんなことが起こります。
● 塗装専門店の場合
足場屋(自社の場合もあり)と自社(ヘルプの場合もあり)で完結する。
<メリット>一貫施工。
<デメリット>監督がいない。いても自社の監督か親方が兼任で、塗装の知識しかない。職人のレベルが偏っていることがある。親方が営業に出てしまうため、現場のレベルが下がる。
● 大手塗装専門店の場合
足場屋と自社(下請け、孫請けの場合もあり)で完結する。
<メリット>監督が付く。
<デメリット>監督が現場調整やお客様とのやりとり程度。職人の意識が低い傾向がある。
● リフォーム会社の場合
足場屋と外注の塗装屋で完結する。
<メリット>監督が付くことがある。職人のレベルは安定している傾向がある。
<デメリット>営業兼監督の場合が多く、知識レベルが低いことが多い。
● 工務店の場合
足場屋と外注の塗装屋で完結する。
<メリット>職人のレベルは安定している傾向がある。総合的知識がある。
<デメリット>監督が現場調整やお客とのやりとり程度。
全体的な問題点は?
上記のどの場合においても、ほとんどの現場監督は足場にすら上りません。
上るのは職人を探すときくらいで、完成検査を監督立ち合いで実施する会社においても、検査時間はせいぜい10分から、長くても30分です。
つまりほとんどが現場監督とは名ばかりの現場調整係・現場巡回員です。
現場監督がいないということは、現場レベルは職長の域を超えることはありません。
家のプロである建築士や普段から老朽度調査を実施している耐震診断士が、現場監督として長時間現場に滞在して外装に目を光らせていることのメリットとは!?
家の劣化のサインは、現況にいちばん現れています。
だからまず足場を組んだすぐあとに調査する必要があります。
次は高圧洗浄後。
外壁が濡れている状態、樋に水が溜まった状態、ベランダの床を流れる水の様子、見切りや水切りに水が溜まったり流れたりする様子、乾き始めた部分となかなか乾かない部分など、水によって違う表情が現れるので絶対に抑えるべきポイントです。
雨上がりに点検するのも同じ理由で有効です。
下塗りが終わった後は、光の当たり方や吸い込みムラで表情が違って見えたり、特に白い下塗りを使った時には穴やノコ目など異常がある部分が見やすくなったりするので絶対必要なタイミングです。
中塗り後は、主に外壁以外の劣化に気付きやすくなります。
樋や樋持ち金物、破風・鼻隠し、各種設備の取り合い、外壁には関係ありませんが家の付帯物にも点検の目が向けられます。
完成の一歩手前になるので、完成検査を視野に入れた仕上がりの点検も同時に行います。
上塗り後は完成検査で、仕上がりの検査に加え、足場を解体してしまうとその先10年間点検が行われなくなるので、最終的に全体を厳しく点検していきます。
このようなベストなタイミングで確実な点検調査ができる現場監督がいないということは、塗装工事は塗膜を付ける工事でしかありません。
そのため同じような劣化が数年後に発生したり、既に劣化している箇所に気付けずキレイに塗膜で隠してしまうといったことが起こったりするのです。
そして残念ながら99.9%の塗装工事は塗膜を付けるだけの工事になっています。
もっと残念なことに、点検も補修もしなくても、塗膜が付いてさえいればキレイに見えるので、あなたはどこの業者に頼んでも何年かは不満を抱くことはないでしょう。
私の場合ですが、お見積り時にお出しする現況写真にはあまりコメントを付けません。
その理由は、危機感を持たせるための、はっきり言うと契約を取るためのツールとして使いたくないからです。
それに足場を組んだ状態で安心して調査できるか、水に濡れているかどうか、午前か午後かなどの要因で見つけられるものと見つけられないものがあり、お見積り時の調査のたった1~2時間程度で気付いたことを全てと思っていただきたくありません。
たった1~2時間で全てを悟ったと、そして塗装工事が始まればそこを対策して“はい、安心してください。”なんて口が裂けても言えません。
少し話がそれますが、相見積もりを取る理由は、値段を比べることにはありません。
極端に高かったり安かったりは問題ですが、金額の差は2割程度の前後が一般的です。
施工保証がどうかということでもありません。
当社も施工保証をお付けしますが、他社さんも含め施工保証書に規定されているような対象事例はまず起こりません。
ですので、保証書を発行することにはほとんど意味はありません。
(当社では予定通りの適切な施工を行わなかった場合の“全額返金保証書”を別途発行しております。)
見るべきポイントは、大切なご自宅を、現状をきちんと踏まえたうえで、今後10年間本当に安心して暮らせる状態を維持してくれる業者なのか、ということです。
塗装業者は一度お見積りの依頼を受けると、いろんなツールやトークをもって契約を勝ち取ろうとします。
契約を取ることに99%の労力を割くという親方もいるほどです。
外壁塗装工事はメンテナンス工事です。
塗膜を付ける工事ではありません。
もちろん点検を何度もするからいい塗装工事になるかと言われると、残念ながらそんなことはありません。
塗装は塗装職人の腕によって仕上がりも持ちも変わります。
細かく鋭い眼で点検し、必要な箇所を補修し、一流の腕でもって塗膜を付けて保護する。
現場監督と塗装職人のコラボレーションによって本当に安心できる塗装工事が完成するのです。